Vol.14 彼女たちはなぜ、いなくなるのか?

ブログ/blog ①

前回の振り返り

地方出身の若い女性たちは、一度転出すると地元へ戻る意向が薄く、転出先がその後の生活の拠点となる傾向であることが前回判りました。しかし、そもそもなぜ若い女性たちは地方から都市部、特に東京圏へ転出するのでしょうか。今回以降は、その理由を探っていこうと思います。

今回の結論

(1)地方から転出する主な理由は、男女共通して「仕事」「進学」。そして女性の場合は、「生活環境」が転出理由に加わることが判りました。

(2)「生活環境」のうち、特に「閉塞感」が女性の転出を促進している可能性があります。

状況をデータで見ると・・・

グラフ14-1は、東京圏(一都三県)以外の出身で東京圏在住者が、移住を選択する背景となった出身地の状況について回答したアンケートの結果(2020年)です。

グラフ14-1 東京圏への移住の背景となった地元の状況(2020年)

グラフ出典:国土交通省(2021) 市民向け国際アンケート調査結果 *調査対象者:東京圏(一都三県)の外の出身で、東京圏の在住者 *出身地:15歳になるまでの間で最も長く過ごした地域 *調査期間:2020年9月18日 – 2020年10月8日 *インターネットによるアンケート調査 *複数回答 *ブログ筆者による色などの加工あり 

まず、全体で最も多く選択された理由が「仕事」項目です。全体で15項目中、男女ともに上位を占めたのが「希望する職種が見つからないこと」「賃金等の待遇が良い仕事が見つからないこと」という「仕事」項目でした。男性の場合は「自分の能力を生かせる仕事が見つからない」も加わり、「仕事」項目が上位3位までを占めました。

次に多く選択されたのは「進学」で、男女ともに「希望する進学先が地元にないこと」を選択しています。女性の場合は、「仕事(賃金等の待遇が良い仕事が見つからないこと)」と同程度に「進学(希望する進学先が地元にないこと)」を選択しています。

ところで、男性の選択が「仕事」「進学」に比較的集中しているのに比べ、女性は地元の「生活環境」に関する項目も選択しており、「生活環境」のほぼ全ての項目で男性よりも多くなっています。「不便(日常生活が不便なこと、公共交通機関が不便なこと)」や「閉塞感(人間関係やコミュニティに閉塞感があること)」は、「進学」に並ぶほど女性から選択されており、特に「閉塞感」に関しては男性の2倍近く女性は選択していて、この項目は女性に特徴的な出身地からの流出の理由であることが伺えます。

グラフ14-1を導き出した調査(参考文献①)以外の調査でも、出身地から流出する理由の上位は男女共通して「仕事」「進学」で、女性は「生活環境」についても選択するという似た傾向が出ています。これらのデータから、出身地の「生活環境」が女性の転出に特徴的と考えることが出来そうです。

特に「閉塞感」に関しては、地方から都市部への若い女性の流出加速させているキーの一つとして注目の項目であり、次回以降でさらに詳しく取り上げたいと思います。

まとめ

(1)地方から転出する主な理由は、男女共通して「仕事」「進学」。そして女性の場合は、「生活環境」が転出理由に加わることが判りました。

(2)「生活環境」のうち、特に「閉塞感」が女性の転出を促進している可能性があります。

参考文献

①国土交通省(2021) 市民向け国際アンケート調査結果 https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/kokudoseisaku_tk3_000107.html

②内閣府政策統括官(2023)地域の経済 2023― 地域における人手不足問題の現状と課題 ― https://www5.cao.go.jp/j-j/cr/cr23/cr23.html