Vol.17 地方を去る若い女性たち – その理由と未来への影響〜閉塞感とは?

ブログ/blog ①

前回の振り返り

ここまで地方から都市部、特に東京圏への若い女性転出理由について考察を続けてきました。Vol.14では、転出の主な理由は「仕事」や「進学」、さらには「生活環境」であり、「生活環境」のなかでも女性に特徴的な理由として「閉塞感」がありました。今回はその「閉塞感」について考察を重ねます

今回の結論

(1)地方から東京圏への若い女性の流出は、単に仕事や進学の機会を求めるだけでなく、より深い社会的・文化的な要因が絡んでいる可能性がある。

状況をデータで見ると・・・

表17-1は、主に東北6県および新潟県出身の19歳〜29歳の女性を回答者として、若い女性の東京圏への流出に対する策について尋ねた結果をまとめたものです。

表17-1 若年女性の人口流出に歯止めをかける条件

出典:橋本有子(2021)加速化する地方の人口減少・少子高齢化に歯止めをかける(その1)〜東北の若年女性はなぜ東京を目指すのか?、〜東北活性研42 *複数回答 *調査実施:2020年 *ブログ筆者による網掛けの加工あり

この調査結果からは、最も必要とされる対策は「仕事」(青の網掛け部分)関連であり、次いで「生活環境」(赤の網掛け部分)への対策が求められていることが分かります。「生活環境」では、「公共交通機関の充実」のような物理的な要素と、「閉塞感の払拭」といった地域コミュニティに関わる要素が特に求められています。これはVol.14のグラフ14-1で示した状況とほぼ一致しており、特に女性に特徴的な「閉塞感」という要因がここでも再び浮かび上がりました。

さて、これらの調査で挙げられた「閉塞感」とは、具体的に何を意味するのでしょうか? Vol.15で取り上げたNHK・クローズアップ現代(2024年6月17日放映)での、地方から東京圏へ転出した若い女性たちの意見を見てみましょう。

「東京で就職してやっと息苦しさから解放された(20代女性)」

「故郷で感じていた女性として生きる閉塞感、ひとりの人間として尊重されない苦しさ(10代女性)」

「女性はこうしなければならない、と圧を与えられながら生きてきた(30代女性)」

これらの意見から、地方で若い女性が受け取る閉塞感の一端が見えてきます。生き方に対する制約や、個人としての尊重の欠如、そして社会的な圧力が、若い女性たちが地方から去る本質的要因となっている可能性があると考えます。

次回は、ここまでを踏まえ、地方から都市部へと転出した女性たちは再び地方に戻るのかどうか、また、その背景について探っていきたいと思います。

まとめ

(1)地方から東京圏への若い女性の流出は、単に仕事や進学の機会を求めるだけでなく、より深い社会的・文化的な要因が絡んでいる可能性がある。

参考文献

①橋本有子(2021)加速化する地方の人口減少・少子高齢化に歯止めをかける(その1)〜東北の若年女性はなぜ東京を目指すのか?、〜東北活性研42 https://www.kasseiken.jp/2021/02/02/vol42/

②NHK(2024年6月17日放映)クローズアップ現代、女性たちが去っていく 地方創生10年・政策と現実のギャップ(映像資料)