前回の振り返り
前回(Vol.6、Vol.7参照)は、東北地方の状況に焦点を当てました。東北地方は転出する女性の割合が全国で最も多いエリアで、転出した女性の多くは東京圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)へと向かい、その世代は20〜24歳が中心でした。
今回はさらに、中部地方の状況を見ていきます。中部地方は、東北地方の次に転出する女性の割合が多いエリアです(Vol.6参照)。なお、ここでの中部地方とは、愛知、岐阜、静岡、長野、新潟、富山、石川、福井、山梨の各県を指しています。
今回の結論
(1)長野県と静岡県では若い世代の転出が目立ち、特に20〜24歳の女性の転出傾向が顕著。この傾向は東北地方と類似。
状況をデータで見ると・・・
中部地方のうち、長野県と静岡県を例に、状況を具体的に見ていきましょう。長野県は10年間の女性の転出数が全国20位、静岡県は5位でした(Vol.6、表6-2参照)。
まず、長野県の状況を見ていきましょう。
グラフ8-1 長野県の男女・年代別の転出入数(2015年〜2020年)
図表8-1は、長野県の男女別・年代別の転出入者数(2015年〜2020年)を示しています。長野県では、全体の転出数と転入数がアンバランスであること、10代後半から20代前半の転出が目立ち、特に20〜24歳の転出が男女とも顕著であることが判ります。この傾向は特に女性で強く出ています。
一方、静岡県の状況はどのようになっているのでしょうか。
グラフ8-2 静岡県の年齢別、男女別の社会増減(2014年)
少し以前のデータになりますが、静岡県でも長野県と同様に、全体の転出数と転入数がアンバランスです。また、10代後半から20代前半の若い世代の転出が顕著で、特に、20〜24歳の女性(青い線)の転出が男性に比べて目立つことが判りました。
その女性の動向について年ごとの変化を見てみましょう。
グラフ8-3 静岡県における女性の年齢別社会増減(2011年、2013年、2015年)
図表8-3は、2011年(青い線)、2013年(灰色の線)、2015年(黒い線)の女性の年齢別の社会増減を表しています。どの年においても、20〜24歳の女性の転出が最も多く、その傾向が年を追うごとに強くなっていることが判ります。
長野県、静岡県ともに、東北地方と同様、若い女性の転出傾向が顕著であることが判りました。これは前回まで見てきたことを裏付けていると言えるでしょう。こうした若い女性たちはこれまでの結果から、多くが東京圏を転出先としたと思われます。また、転出入数のアンバランスから、転出した若い世代は戻っていない傾向もうかがえます。
さて、中部地方には日本三大都市圏の一つ、名古屋圏があります。中部地方の都市圏の状況はどのようになっているのでしょうか。次回は名古屋圏を抱える愛知県に焦点を当てます。
まとめ
(1)長野県と静岡県では若い世代の転出が目立ち、特に20〜24歳の女性の転出傾向が顕著。この傾向は東北地方と類似。
参考文献
①長野県総合計画審議会 (2022)次期総合5か年計画の策定について(答申案) https://www.pref.nagano.lg.jp/kikaku/kensei/soshiki/shingikai/ichiran/sogokeikaku/plan3/documents/shiryou2_toushinan.pdf
②岩間晴美(2016)若年女性の流出問題を考える、SERI monthly : 明日の地域と企業の情報誌 54 (8・9) https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R000000004-I027579585
③望月毅(2015)減少が加速する静岡県の人口-II ~雇用創出と若年層対策がカギ~ 、SERI monthly : 明日の地域と企業の情報誌 53 (10) https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R000000004-I027579585