前回の振り返り
引き続き中部地方の状況に着目します。中部地方は、東北地方に次いで転出する女性の割合が全国でも高いエリアでした(vol.6参照)。前回は、中部地方の長野県と静岡県を例として見てみました(vol.8参照)。その結果、両県とも若い世代の転出が目立ち、特に20〜24歳の女性の転出傾向が顕著で、この点について東北地方と類似していることが判りました。
ところで中部地方には日本三大都市圏の一つ、名古屋圏があります。都市部を有するエリアの状況はどのようになっているのでしょうか。今回は名古屋圏の中核である愛知県に焦点を当てていきます。
今回の結論
(1)愛知県では、2010〜2019年の10年間は転入超過プラスだが、一方で2011年以降、東京圏への転出数が増加傾向。
(2)愛知県と東京圏との女性の移動状況を転出に注目すると、東京圏への移動が20〜24歳で目立つ(2022年)という、東北地方や中部地方の他県と類似していることが判った。
状況をデータで見ると・・・
愛知県は、2010〜2019年の10年間における各都道府県の転出入で、転入超過がプラスの9地域に入っていました(Vol.6、表6-1参照)。その愛知県の内実が近年どのようになっているのか、詳しく見ていきます。
グラフ9ー1 愛知県の全国地域ブロック別の転出入の推移(1995〜2022年)
グラフ9-1は、愛知県の転出入数の推移を表しています(1955〜2022年)。愛知県では、2010〜2019年の10年間は男女合わせて転入超過プラスであることがこのグラフからも判ります。しかし、2020年以降は転出数が転入数を上回っています。転入数の減少はコロナ禍の影響による都市部への移動の減少かもしれません。しかし一方で、転出数を見ると向かう先のほとんどがさらに規模の大きな都市部・東京圏(赤い棒グラフ)であることが解り、しかも転入数ほどの減少はなく、コロナ禍の影響が限定的であるように見えます。そもそもコロナ禍以前の2011年から、東京圏への転出数は多少上下動があるものの増加傾向で、この先の動向に注目したいと思います。
さらに、2022年の状況を女性について見てみましょう。
グラフ9-2 愛知県の東京圏に対する年齢階級別の人口移動の状況(女性、2022年)
グラフ9-2は、愛知県の2022年の女性の転出入数について、愛知県と東京圏との間での転出入を年齢別に示したものです。
多くの年代で東京圏への転出数が転入数を上回っています。棒グラフが際立って長い(転出入数が多い)のは20〜24歳、25〜29歳で、特に20代前半の東京圏への転出が目立ちます。
前回までの、東北地方や中部地方の各県における「20〜24歳の女性が東京圏へと転出する」という傾向は、名古屋圏の中核・愛知県でも同様に見られることが判りました。2019年までの10年間は転入超過プラスだった愛知県の、2020年以降の変化にも注目したいと思います。
ここまで4回にわたって東北地方と中部地方の複数の県を例として地方の状況を見て行きました。次回以降はこうした地方の状況を整理します。
まとめ
(1)愛知県では2010〜2019年の10年間は転入超過プラスだが、一方で2011年以降、東京圏への転出数が増加傾向。
(2)愛知県と東京圏との女性の移動状況を転出に注目すると、東京圏への移動が20〜24歳で目立つ(2022年)という、東北地方や中部地方の他県と類似していることが判った。
参考文献
①愛知県(2023)愛知県まち・ひと・しごと創生総合戦略2023-2027(愛知県人口問題対策プラン)https://www.pref.aichi.jp/press-release/senryaku2023-sakutei.html