前回の振り返り
前回まで東北地方と中部地方の転出入動向を例として、地方の状況を見てきました。その結果、20〜24歳の女性の転出が顕著な共通点であることが判りました。中部地方には、日本三大都市圏の一つ、名古屋圏があります。その中核である愛知県でも、2011年以降、東京圏への転出増加傾向が伺えました。地方の都市部ではどのような状況なのでしょうか。今回は都市部に焦点を当ててみます。
今回の結論
(1)地方の都市部においても、20〜24歳の女性の東京圏への転出が目立ち、前回までの転出入パターンと共通している。
状況をデータで見ると・・・
まず、日本の三大都市圏(大阪圏、名古屋圏、東京圏)で転出入を比較してみましょう。
グラフ10-1 三大都市圏の転入超過数(2021年)
グラフ10-1は三大都市圏の2021年の転入超過数を表しています。東京圏のみが転入超過で、しかもこの状況はこの年だけでなく継続しています(参考文献①参照)。因みに、東京圏とは東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県、名古屋圏とは愛知県・岐阜県・三重県、大阪圏とは大阪府・兵庫県・京都府・奈良県を指しています。
次に、いくつかの都市を例として、その状況を具体的に見ていきましょう。
グラフ10-2 各都市から東京都への転出超過数(2022年)
グラフ10-2は、複数の都市と東京都との間での転出入を表しています(2022年)。ここでは名古屋市、札幌市、京都市、大阪市、福岡市を取り上げています。
どの都市においても圧倒的に東京への転出数が多く、転出の中心は共通して20代の男女です。そして20代前半を見ると、男性と比較してほとんどの都市で東京都への女性の移動が顕著です。なお、名古屋市と大阪市では20代後半の男性の東京への移動が目立つことも注目しておきたいと思います。
三大都市圏のなかでも東京圏のみが転入超過でした。さらに地方の各都市から東京都への移動に焦点を当てると、中心は共通して20代で、なかでも20代前半の東京都への移動数は、ほとんどの都市で男性よりも女性が多いことが判りました。Vol.5で示した状況を裏付ける一つとなっていますね。
次回は、ここまで見てきた地方の状況を整理してみようと思います。
まとめ
(1)地方の都市部においても、20〜24歳の女性の東京への転出が目立ち、前回までの転出入パターンと共通している。
参考文献
①天野馨南子(2022)都道府県・人口動態解説(中)—沈む名古屋・大阪圏、東京圏の一強止まらず、ニッセイ基礎研レポート2022-05-16 https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=71100?site=nli
②新庄徹(2023)広域の人口移動から見た名古屋市・愛知県の現状と課題—住民基本台帳人口移動報告の分析から—、NUIレポートhttps://www.nup.or.jp/nui/user/media/document/investigation/r5/R5NUIreport.pdf